シェフの冒険とメートルディー
料理はアート,新しい料理は自らのインスピレーションから生まれる、そのインスピレーションは,自分の今までの経験と技術から成り立つ。斬新なアイデア=批判的な言葉で言えば飛んでいる料理、我々はこれらを日々追求しているのです。何故、現在の日本料理が衰退の道をたどっているのか、若者の働き手がなぜ日本料理を好まず、フレンチ、イタリアン等へ向かうのか?日本料理には進歩がないのか……?理解してもらえないのか……?古来の日本料理は何処へ行ってしまったのか?昔一流と言われた店、俺たちの回りに残っているものはほんの一握り、それほど多くはないと思います。それは日本料理の伝統、技法を重んじすぎて斬新さがなかなか出てこない所に日本料理の面白さが消えて堅苦しさだけが残ってしまっているから敬遠されたのではと思う?今ではそれすら見当たらないのが現状。
シェフの冒険はお客様に受け入れられない場合が多々あります、これはフレンチのスターシェフも、また同じような事を何度も経験していると思います。基本に基本を積み重ね今までにないプレゼンテーションと味わいを生み出すのだから当然失敗もある、失敗があるから冒険なのです。こんな理由で「シェフの冒険とメートルディー」の関係を俺なりに考えている事を書いてみました。

日本料理の一流店に欠けている物がまさにこの問題だと思います、一流の座に腰を下ろし少々値段が高くてもだまって料理を差し出せば,黙って食べ,黙って料金を払う。このシステムが当たり前の日本スタイル?昨今は色々と努力し、このスタイルから抜け出してはいますが、まだまだ足りないと思います。もちろん何の冒険もする事なくのんびり過ごしているシェフ(板前さん)も居るでしょうが一流を目指す者、毎日が冒険なのですフレンチのスターシェフは自分たちで新しい料理道具等を考え常にチャレンジしているのを目の当たりにして、日本料理界の道具、半世紀何も新しい道具等開発されてはいないし、新しく使えると思うと日本料理以外の道具になっている。この食材で出来上がった料理をどう表現しようかと……毎日考えているので、その時により同じ食材、同じ皿を使っても以前の物とはプレゼンテーションが違ってくるのが当たり前、シェフが開発したオリジナルな料理、これはお客様がどう受け止めるかシェフは非常に心配なのです、居酒屋と違いメニューの中から選べば(写真が表示されている.一流とされているレストランでは写真を掲載していません)、選んだ人間も諦めがつくでしょうが、コース料理で何が出てくるか分からない料理に高い料金を払い、食べるのだから何かサプライズがあって当たり前、何もなければ評価が低い。料理をテーブルに出す時はシェフは何の力も加える事が出来ないのです、そこで力を発揮するのが、メートルディー(ヘッドウエイター、ウエイトレス)なのです。その時、お客さんの期待を半減させるか、倍増させるかこれは100%メートルディーの腕に関わる問題なのです、例えば「これは、今月の新メニューです」とテーブルに置くか、またそれに付け加えて「食材の特徴と説明、この一皿が出来上がる過程での他にない特味を素人の方にも分かり易く説明出来るか」少しオーバーな説明でも良いのです、これらがその場での雰囲気を高め,例え料理が単純に見えても奥深さを感じさせる事が出来るのがメートルディーの腕にかかっているのです、またそこでお客様の反応を的確にシェフに伝える事も重要な事、どのような食べ方をしているか,料理について何かお客様同士が話しているようならその話にも興味を持ってもらいたいものです、料理を出してから食べ終わるまで、そして席を立つまで、その料理の評価は常に変化すます、食べ終わったからと気使いを怠ると又、前に戻り評価し直すのが常なのです、メートルディーはお客様が帰る時まで、姿が見えなくなるまで気遣う事がメートルディーの仕事です。数年前京都の世界的にも有名な料亭で食事をしたと時の事ですが仲居さんは表に出て、俺が角を曲がるまで見送ってくれた事があります。シェフは常に冒険をしているから斬新な料理が生まれてくるのです、それがお客様に受け入れられるか否か、まず全てが受け入れられる事はないのです、全く受け入れてもらえないときも何度もあります、まさに失敗を繰り返す事もあると思いますが,その失敗を和らげてお客様を送り出すのもメートルディーの「技術」だと思います,料理の評価が低いのはシェフの責任です,しかし最後に帰る時「また来てみよう」と思わせるのはメートルディーの技量のウエイトが重いのです、料理に満足をしてない時、そのお客様が帰るまでに何をすればその不満を少しでも和らげる事が出来るか常に考える事です、こんなことを言うと「それはシェフの責任逃れ」と言う方もいます、実際俺も何度も言われました。しかしそうではないのです「何か他にないかと常に求めている料理人は、お客様の反応は素直に認め次に活かそうと思い続けているのです」その次ぎに活かす事の出来るチャンスが来るようメートルディーに望みを託したいのです。現実にシェフがこれは「味も良いし、プレゼンテーションも悪くない」と思っても受け入れてもらえない事があります、しかしそれで諦めて、変化のない料理を常に出し続けていると先は見えないのです。どうしてもシェフとメートルディーは一心同体で行動しなければレストランは盛り上がらないのです。
これは、シェフの失敗をメートルディーに押し付けているのではありません、我々も常に勉強をしている限り、本当に不味い料理を出す事はないと思うのです。料理の評価等は人それぞれ、それらに、いかに上手く対応出来るかなのです。

                                                  前ページへ戻る